コラム

心理学系の検定合格を目指す

2022.9.1

心理学関連の検定合格を目指す際、メリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。 

心理学の検定として、こころ検定があります。
こころ検定は1級・2級・3級・4級があり、それぞれ、基礎心理学・応用心理学などのカリキュラムで構成されています。
また、基礎と応用における応用の中には、心理学の場合、臨床というものが含まれます。
では、まず、心理学の基礎・応用・臨床について、簡単に解説していきたいと思います。 

心理学の基礎・応用・臨床

心理学は大きく分けて基礎分野と応用分野に分けられます。
代表的な基礎分野として、学習心理学・認知心理学・生理心理学・知覚心理学・社会心理学・感情心理学・発達心理学・パーソナリティ心理学・心理統計学などがあります。

一方で、応用分野には、臨床心理学、健康心理学、産業・組織心理学、教育心理学、家族心理学、学校心理学、経済心理学、犯罪心理学、福祉心理学、コミュニティ心理学などがあります。
そして、この応用分野の中の臨床心理学において、心理カウンセリング、心理アセスメント、心理療法、心理検査法などの分野が含まれています。 

こころ検定では、4級で学習心理学・認知心理学・生理心理学・知覚心理学・社会心理学・感情心理学という6つの基礎心理学と知能分野の合計7分野でカリキュラムが構成されています。
3級では、発達心理学・パーソナリティ心理学という2つの基礎心理学と教育心理学・健康心理学・検査学という3つの応用心理学の合計5分野でカリキュラムが構成されています。 

こころ検定2級と1級は、心理カウンセラーとしての知識・技能を身につけるためのカリキュラムとなっています。
2級では基礎心理学の内容に加えて、臨床心理学(心理カウンセリング・心理療法)などの応用心理学、そして、精神医学や解剖生理学などの分野が含まれています。
1級では、2級と同じく基礎心理学の分野に加えて、産業・組織心理学、家族心理学、コミュニティ心理学などの応用心理学、そして、臨床心理学、精神医学などの分野が含まれています。 

では、これらの基礎心理学や応用心理学に関する検定を受検するメリット・デメリットには、何があるのでしょうか。 

基礎心理学の検定を勉強・受検するメリット

基礎心理学の検定を勉強・受検するメリットについて、分野ごとに解説していきたいと思います。

学習心理学 

学習心理学は行動に関する心理学であり、より適切な行動の増加・維持や不適切な行動の減少・消去に役立てられています。
これは行動療法として、カウンセリング場面でも活かされていますが、より日常的な仕事やスポーツなどの場面にも活用されており、これは応用行動分析とよばれています。
応用行動分析には、禁煙・ダイエット・貯金などの、私たちが「苦手」とする行動を習慣化させる方法などが含まれています。
学習心理学を勉強することで、日常生活をより豊かなものにし、自分で自分をコントロールできるようになる可能性が高まります。 

認知心理学

認知心理学が取り扱うのは記憶・思考・判断・評価・推論などの人間の認知機能です。
人間の認知機能は“なるべく早く”、“なるべく労力をかけずに”、情報を処理しようとする傾向があるため、誤りや歪みなどが発生することが多いということが判明しています。
認知心理学は人間の陥りやすい誤りや歪みを研究によって明らかにすることで、それらを未然に防いだり、より正しい方向へ導くサポートをすることが可能となると考えられます。

認知心理学について勉強することで、情報処理能力が向上し、問題解決能力を向上させることができます。
これは、知能が向上するというよりも、自分が陥りやすい「思考のワナ」に気づきやすくなり、間違った判断を回避することができるようになるというニュアンスです。認知心理学の知識は、私たちの生活をよりスマートにしてくれるわけです。 

生理心理学

生理心理学は人間の【身体】・【精神】のつながりを正確に理解し、それを数値化・可視化して、誰でも自分の現在の状態を分かり易い方法で確認できるようにすることを目指しています。
これは、身体状態・精神状態の正確な数値化・可視化は、病気の診断や治療だけではなく、予防においても非常に重要な示唆を与えてくれるものであると考えられます。
生理心理学を勉強することで、ストレスと自律神経の関係性や、ストレスと病気の関係性に関して、科学的に正しく理解することができます。
そして、自分自身で心身の健康状態を維持させるセルフケアのスキルを身に着ける上でも、生理心理学の知見は重要なものとなるでしょう。 

知覚心理学

知覚心理学は目・耳・鼻・舌・皮膚という、私たちの生活にとって重要な五感に関する心理学です。
知覚心理学について勉強することで、私たちは世界をどのように感じ取っているのかということをより正確に理解することができます。
そして、目や耳などの健康がいかに重要なのかということも、同時に理解できるのではないかと思います。
目や耳の健康を良好な状態で維持することができれば、ある程度、高齢になったとしても、より良い生活を送ることができると考えられます。 

社会心理学

社会心理学は他者との関係性や集団と個人の心理的過程の違いについて、様々な知見を与えてくれる分野です。
また、社会心理学は、“今、社会で起きていること”が“なぜ、起きているのか?”について、心理学的な観点から研究し、個人の心理的過程がどのように集団へと広がり、最終的に地域や国などの社会へと拡大していくのかを正確に理解することに役立てられています。
さらには、1対1などの少数の集団においても、より良いコミュニケーションを図るにはどうすればいいのかという知見も与えてくれるものです。
社会心理学について勉強することで、円滑なコミュニケーションを図る方法を学ぶことができます。
そして、常に自分と相手を尊重した態度で接することもできるようになるでしょう。
これはビジネスの場面でも重要な要素であり、職種や業種を限定せず、あらゆる仕事の場面で活用できるスキルを身に着けることができるのではないかと思います。 

感情心理学

感情心理学は「気持ち」というものについて、科学的に正確な理解を促進する知見を有しています。
そして、感情心理学を勉強することで、自分の感情や他人の感情を正確に理解することができるようになります。
人間は他者の感情というものを重視する生活を送る生物であるとされています。
これは社会生活全般において、感情理解というものが非常に重要であるということを意味しています。
また、怒りや不安、抑うつなどのネガティブな感情に、いかに振り回されないようにするかについても学ぶことができます。
自分で自分の感情をコントロールするということも、セルフケアの観点からは非常に重要であり、感情心理学の知見はそこにも活かすことができます。 

発達心理学

発達心理学は人間の精神的な発達過程について勉強します。
発達心理学を勉強することで、様々な年代の「こころの動き」を科学的根拠に基づいて正確に学ぶことができます。
たとえば、親は子どもの養育に関する知見を得ることができ、子育てに知識を役立てることができます。
また、発達心理学は自分と異なる世代の人との円滑なコミュニケーションに役立ちます。
従って、幼稚園や保育園の先生、小中高の先生、介護福祉スタッフなどのように自分とは異なる年代の人と関わることの多い業務に従事している職業の方にとって、発達心理学の知見は非常に重要な知識を与えてくれるものとなっています。 

パーソナリティ心理学

パーソナリティ心理学は人格・性格の分類や特徴、傾向について勉強します。
パーソナリティ心理学を勉強することで、自分自身の性格や他人の性格について、科学的根拠に基づいて正確に学ぶことができます。
つまり、パーソナリティというものを通じて、自分自身を知り、他人を知ることができるわけです。
特に自分の考え方・物事の捉え方の「クセ」を知るということは、日常生活や他者とのコミュニケーションにおいて非常に重要です。
そして、自分が普段、無意識にしてしまっている言動や行動の裏にある「パーソナリティ」を知ることで、日常生活をより豊かなものにすることができるわけです。

基礎心理学の検定を勉強・受検するデメリット

何かを勉強して、正しい知識を身につけるということ自体は、どのような分野であれメリットがあるものです。
従って、勉強・受検することの「デメリット」というものが厳密にあるわけではないのですが、あえて挙げるとすると、一般の方々がイメージする「心理学」という分野と実際の「心理学」には隔たりがあるということです。
特に基礎心理学の分野は、皆さんがイメージしている「カウンセリング」や「相談」などとは大きく異なる勉強内容ではないかと思います。 

大学の心理学科

日本の4年制大学における心理学科や心理学専攻は文学部や教育学部、社会学部などの文系の学部に存在しています。
そのため、心理学、特に基礎心理学は「文系」というイメージが一般的です。
しかし、基礎心理学は人間の脳や神経、情報処理、行動のメカニズム、バイタルデータなどについて扱うことが多く、むしろ、理系的な内容が多いです。
そのため、基礎心理学を勉強する過程で「イメージと違う」「難しい」「自分が勉強したいこととズレている」と感じてしまう方も少なからず、いらっしゃるかと思います。
特に心理カウンセラーになろうと考えている方からすると、基礎心理学の内容は「カウンセリングに関係ない」「なんで、こんなことを勉強する必要があるのか」などのようにネガティブな感情を抱いてしまいがちです。
これは、大学で心理カウンセラーを目指している学生も感じていることなので、検定を受検するということを目指す方も同じように感じてしまう可能性は高いでしょう。
しかし、心理カウンセリングを含む、応用心理学の内容は基礎心理学の内容の正確な理解なくして成立しないので、基礎心理学を学ぶことは、心理カウンセラーを目指している、社会で役立つ応用的な知識を身につけたい、という方々にとっても必須なのです。 

応用心理学の検定を勉強・受検するメリット

産業・組織心理学では、職務適性や採用人事、仕事とストレスの関係などについて学ぶことができます。
社会に出て仕事をするということは、様々な課題や困難に直面することになります。
また、職業・業務内容が異なる場合、課題や困難も異なってきます。
産業・組織心理学を勉強することで、自分と仕事の関係を再確認し、できる限り高いパフォーマンスで仕事をするためには、どうすればよいのか、できるだけ少ないストレスで仕事をするためには、どうすればよいのかなどについて知識を活かしていくことができます。

教育心理学

教育心理学は授業の構成・評価やテスト・試験の問題の作成方法、何かを学ぶということのメカニズムについて勉強します。
教育心理学は大学の教職課程などにおいては必須の授業となっています。
従って、小中高の先生になることを目指している方にとっては、非常に重要な知識が含まれています。
また、普段「テストを受ける側」であることが多い私たちですが、何かの機会に「テストを作る側」になった際、教育心理学の知見は非常に役立つものになるでしょう。 

家族心理学

家族心理学では、一人の人間としてではなく「家族」という集団単位での精神的な変化や発達について勉強します。
家族心理学を学ぶことで、個人としての自分だけでなく、家族の中の自分、家族の中の役割というものを正確に認識することができるようになります。
そして、特に家族の中の自分というものが、年齢を経たり、社会的な立場が変化する中で変わっていくということを理解し、家族内における適切な役割を身につけることができるようになるわけです。
また、家族心理学は子育てや夫婦関係、高齢の両親との関係などについて、科学的な根拠に基づいて理解し、実際の家庭生活に活かすことができます。 

コミュニティ心理学

コミュニティ心理学は、地域コミュニティでの活動や、いわゆる他職種連携やコンサルテーションという活動に関して勉強します。
地域での活動も他職種連携も共通して、様々な背景や専門知識を持つ人同士で協働するという特徴があります。
そこで、専門家同士で円滑に連携する必要があります。
コミュニティ心理学は、こういった人間同士の連携を円滑にし、場合によっては新たなサービスの確立・普及などの社会的にポジティブな影響を及ぼすことができる場合もあります。
また、コミュニティ心理学はスクールカウンセラーの活動において必須の内容となっており、学校などの教育現場で心理カウンセラーが専門家として仕事をする際にも重要なものとなっています。 

健康心理学

健康心理学では、様々な基礎心理学の内容を応用的に展開させることで、心身の健康について勉強します。
健康心理学と臨床心理学は似ている部分、共通している部分も多いですが、決定的な違いは、健康心理学が予防や再発防止という観点から成立しているという点です。
臨床心理学が「悪い部分を治す」というニュアンスが強いのに対して、健康心理学は「良い部分を見つける・強みを伸ばす」というニュアンスが強いものです。
健康心理学について学ぶことで、心身の健康に関するセルフケアの知識を身につけ、普段の生活からリフレッシュすることができるようになります。 

臨床心理学

臨床心理学では、前述のようにカウンセリングや、心理療法、心理検査法について学びます。
臨床心理学は、基礎心理学を学び、さらに他の応用心理学を学んだ上で、それらの知識を十分に理解した状態で学ぶというステップを経るものとなっています。
臨床心理学を学ぶことで、必ずしも心理カウンセラーになれるとは限りませんし、逆に言えば、臨床心理学を学んだ人は必ず心理カウンセラーにならなければならないというわけではありません。
あくまで、専門的な知識として、臨床心理学は人間の心身の健康がどのような過程で悪化し、どのような過程で改善していくのかというプロセスを科学的に示してくれるものとなっています。
臨床心理学を学ぶことで、人間の心理・精神というものの真髄を理解することができます。
これにより、基礎心理学・応用心理学・臨床心理学という3つの心理学分野を網羅的に勉強したことになり、これをもって「心理学を学ぶ」というものがひと段落するということになります。 

応用心理学の検定を勉強・受検するデメリット

 基礎心理学の場合と同様、応用心理学を勉強・受検することの「デメリット」というものが厳密にあるわけではありません。
強いてあげるとすれば、基礎心理学の知識が前提となるため、まずは基礎心理学を勉強してからでなければ、応用心理学の内容を真に理解することはできないということがあります。
また、基礎心理学の場合と同様に、応用心理学にも理系的な要素があるため、より勉強のハードルは高くなってしまうという可能性もあります。
そして、応用心理学の中でも特に、臨床心理学を勉強することで「自分は心に問題があるのではないか?」「自分は心の病なのではないか?」「自分は性格や発達に障害があるのではないか?」と考えてしまうというケースがあります。
しっかりと勉強すればするほど、人間の心について正確に理解できると同時に、それは「自分自身の弱みや悩み、問題と向き合う」ということにもつながります。
人によっては、そのプロセスに苦痛を感じる人もいると思われますので、勉強し、正しい知識を身につけることがデメリットとなってしまうかもしれません。 


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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