コラム

少し変わった視点から心理学を考える Part6

  • コラム
  • 2019/05/13

心理学の研究は一風変わった側面から物事を捉え、面白い結論を導き出しているものがあります。
  
心理学に関する研究は、私たち人間の“滑稽さ”や“上手く行かない歯がゆさ”についても、様々な角度から教えてくれます。
  
タクシー運転手の脳に関する研究:
  
エレナー・マグアイアらの複数のユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、共同でロンドン市内を運航しているタクシーの運転手に関する研究を実施しました。
 
マグアイアらはロンドンのタクシー運転手を対象に、脳のMRI検査を実施しました。
 
また、比較対象としてタクシー運転手ではない一般人の方にも同様のMRI検査を実施しました。
 
その結果、一般人と比較して、タクシー運転手の脳は海馬の後部が発達しており、空間認識能力が高いということが判明しました。
 
タクシー運転手は仕事上、地図の認識や空間把握が非常に重要な能力であると考えられます。
 
研究の結果、仕事において必要な能力が実は高いということが科学的に証明されたわけです。
 
ただし、これらの能力が高いからタクシー運転手という適性の高い職種についているのか、タクシー運転手という仕事を続けていたことで、脳の海馬後部が発達したのかは、まだ明らかになっていません。
  
スーパーやコンビニで流れている「何でもないBGM」の効果:
  
スーパーなどでは何の特徴もないような、普通にしていれば聞き流してしまうBGMが流れていることが多いものです。
 
アメリカでは、このような音楽をミューザックとよばれています。
 
これは、ミューザック社という会社が、スーパーマーケットやレストランやオフィスビルなどに対して、当たり障りのないムード音楽・イージーリスニングなどをBGMとして流すために有線放送で配信するというサービスを実施していることが関係しています。
 
ミューザック社はこのようなBGM配信サービスにおいて、全米最大の規模の会社として知られています。
 
このミューザック社のジェイムズ・F・ハリソンとアメリカ・ウィルクス大学のカール・J・カーネツキー、フランシス・X・ブレナン・ジュニアは、この一見、何でもないようなBGMが人間に及ぼす効果について研究を実施しました。
 
その結果、ミューザックを聞くことによって、免疫系が刺激され、いわゆる風邪などの病気を防ぐ可能性が示唆されました。
  
ワニとギャンブルの意外な関係:
  
オーストラリアのマシュー・ロックロフとナンシー・グリアーは、経済心理学(行動経済学)におけるギャンブルに関する研究を実施しました。
 
彼らはワニ園を訪れた人々のうち、実際にワニに触れた人に、ワニに触れたことに対する嫌悪感についてアンケート調査を実施しました。
 
その上で、スロットゲームのギャンブルに参加してもらいました。
 
その結果、ワニに対する嫌悪感が強い人ほど、スロットゲームによるギャンブルに慎重な姿勢で臨む傾向が認められました。
 
逆にそれほど嫌悪感を感じなかった人は、リスキーな姿勢でギャンブルに臨む傾向が認められました。
 
これまでにも、経済心理学(行動経済学)の研究では、人間の意思決定とストレスには強い関連が認められており、強いストレス状態にある人は、リスキーな意思決定をする傾向が認められています。
 
この実験でもワニに対する嫌悪感 = ストレスの程度と考えることができるため、先行研究の結果をユニークな形で追補することになったわけです。
  
本当は何の意味もないのに、重要なことにように感じてしまう:
  
ゴードン・ペニークックらは、コンピュータによって自動生成させたデタラメで何の意味もない短文を多数作成し、それを実験参加者に読ませて、感想をアンケート調査で5段階評価させました。
 
さらに、比較対象として、有名なことわざや名言なども評価させ、最後に実験参加者自身が、自分や周りの世界についてどう考えているかについても調査しました。
 
その結果、有名なことわざや名言などよりも、デタラメな短文を高く評価した人は、思慮が浅く、認識力が低く、ありもしない陰謀などについても親和的であるということが判明しました。
 
これは、私たちが何の意味もなく、重要性もないような物事・事柄にも「何か素晴らしいことのような気がする」と感じてしまうことがあるということを示しており、またその傾向は普段の思考や認知がネガティブな方向に転じてしまうことを示唆しています。