コラム

少し変わった視点から心理学を考える Part5

  • コラム
  • 2019/05/13

心理学の研究は一風変わった側面から物事を捉え、面白い結論を導き出しているものがあります。
 
心理学に関する研究は、私たち人間の“滑稽さ”や“上手く行かない歯がゆさ”についても、様々な角度から教えてくれます。
 
音につられて、食べ物の食感が変わってしまう:
 
イタリア・トレンド大学のマッシミリアーノ・ザンピーニとイギリス・オックスフォード大学のチャールズ・スペンスは共同研究として、音と食べ物の食感の関連について実験をしました。
 
この実験では、コンピュータで修正した「非常にカリっと新鮮な」感じのするポテトチップスを食べる音を事件参加者に聞かせながら、実際にポテトチップスを食べてもらいました。
 
その結果、コンピュータで加工した音声を聞いた参加者は、自分の食べているポテトチップスが実際以上に「カリっとして新鮮」であると報告しました。
 
これは、聴覚刺激と触覚(舌や口腔内)には関連が強いものの、その強さが実際の知覚を歪ませてしまうこともある、ということを示しています。
  
薬の効果は値段で決まる?:
 
アメリカ・デューク大学のダン・アリエリーはプラセボ効果に関する研究を実施しました。
 
プラセボ効果とは、本来薬物としての効果がない錠剤などを「特別の効果をもつ薬である」と伝えて実験参加者に与えると、暗示的な作用が働くことで、説明された通りの効果が得られることであり、別名、偽薬効果ともよばれています。
 
新薬の真の効果を調べるための臨床試験でも、このプラセボ効果を考慮した比較検討が必須となっています。
 
アリエリーはこのプラセボ効果に経済心理学(行動経済学)の観点を取り入れ、どちらも偽薬の薬を用意し、一方には高い値段を、もう一方には安い値段を設定して実験を行いました。
 
その結果、高価な偽薬は安い偽薬よりも、生理学的な薬理効果が高いことが判明しました。
 
これは、心理的な「本物であると信じている」という状態に加え「値段が高いということは、それだけ役に立つ・効果が高いはずだ」という考えが、身体への薬理作用にも影響を及ぼすということです。
  
今、見ている飲食物が食欲に影響する:
  
ワンシンクは人間の食欲についての研究を実施しました。
 
ワンシンクは研究のために特殊な装置を開発しました。
 
それは、スープ用のお皿ですが、この皿はスープを飲んでいる人には気づかれないように、自動的にスープを注ぎ足すことができるというものです。
 
つまり、実験参加者がいくらスープを飲んでも、スープは絶対になくならないということです。
 
このような条件を設定した上で、実験参加者にはスープを「1杯」飲んでくださいと教示しました。
 
普通の皿に注がれたスープなら、全部飲み干せば、それで「1杯」を飲んだことになります。
 
しかし、この実験ではスープは気づかれないようにずっと注がれ続けるので、いつまでたっても皿は空になりません。
 
この実験では、食欲が満たされたか、満腹になったかを参加者に確認するというのが最大の目的なのですが、絶対に無くなることのないスープを目の前にしていることが、食欲に影響を与えることが判明しました。
 
黒板を引っ掻く音があんなに嫌なのはなぜか?:
  
アメリカ・ノースウェスタン大学などの複数の大学と研究所が連携して行った研究の結果、私たちの誰もが不快に感じる「黒板を引っ掻いた音」の謎が判明しています。
 
D・リン・ハルパーン、ランドルフ・ブレイク、ジェームズ・ヒレンブランドは、24人の実験参加者に対して、様々な騒音を聞かせたところ、多くの人が黒板の引っ掻き音を最も不快であると感じると報告しました。
 
では、なぜ、ありとあらゆる音の中で、黒板の引っ掻き音が最も不快なのでしょうか。
 
ハルパーンらは、黒板を引っ掻いた時に出る音を他の様々な音と比較したところ、野生のアカゲザルが発する外敵への警戒音と似ていることが判明しました。
 
そのため、我々人間がまだ類人猿の頃の記憶が今なお影響しているため、あの音をとても不快に感じるのではないかと示唆されています。