コラム

映画と心理学の関係

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  • 2018/12/07

 私たちは映画を見て、笑ったり、泣いたり、怖くなったりしますが、実は映画と心理学には関連があるということが約100年前に明らかになっています。
 
 映画を見るのが趣味だという人も多いのではないでしょうか。

現在、邦画だけではなく洋画も沢山の映画を見ることができます。

また、ネット配信で映画を見ることもでき、映画館に行かなくても手軽に映像作品を鑑賞することもできるようになっています。

映画を見ることで面白かったり、悲しくなったりします。

これは、映画が私たちの心理状態に影響を及ぼし、感情を揺さぶるからです。

では、人間の心理と映画には具体的にどのような関係があるのでしょうか。

 映画と心理学の関係について、比較的な有名なものに「クレショフ効果」とよばれるものがあります。

 クレショフ効果(Kuleshov Effect)とは、旧ソビエト(ロシア)の映画作家・映画理論家のレフ・クレショフが実験の結果明らかにしたものです。

この実験は1922年に全ロシア映画大学の学内で実施されました。

クレショフ効果とは、1つの映像が映画的にモンタージュ(編集)されることによって、その前後に位置する他の映像の意味に対して及ぼす影響のことを指します。

映画は最初期の頃は映像のみで音声がないサイレント映画が主流でした。

そして、今では当たり前となっている字幕やCGなども、最初の頃はありませんでした。

また、現在と比較すると映像は不鮮明でもありました。クレショフ効果の実験が実施された1922年は映画が誕生してそれほど時間が経過しておらず、現在と比較すると映像の精度は低く、情報量も非常に少ないものでした。

にもかかわらず、クレショフの実験では映像が人間の心理に多大な影響を及ぼすことが判明したのです。

クレショフが実施した実験は以下のようなものでした。
 
実験(1)
 
①実験参加者に俳優のイワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ②実験参加者にスープ皿のクローズアップを見せる。
 
 ③実験参加者に再び、イワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ④実験参加者にモジューヒンの無表情な顔にどのような意味があると感じたかを質問する。
 
実験(2)
 
①実験参加者に俳優のイワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ②実験参加者に棺の中の遺体のクローズアップを見せる。
 
 ③実験参加者に再び、イワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ④実験参加者にモジューヒンの無表情な顔にどのような意味があると感じたかを質問する。
 
実験(3)
 
①実験参加者に俳優のイワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ②実験参加者にソファに横たわる女性のクローズアップを見せる。
 
 ③実験参加者に再び、イワン・モジューヒンの無表情なクローズアップのカットを見せる。
 
 ④実験参加者にモジューヒンの無表情な顔にどのような意味があると感じたかを質問する。
 
 実験(1)、実験(2)、実験(3)の違いは「3つの連続したカットのうち、2つ目のカットが異なる」という部分のみです。

その前後に見せられるイワン・モジューヒンの無表情のカットは全く同じものです。

しかし、(1)、(2)、(3)では、参加者のモジューヒンの無表情な顔に対する感想は全く異なっていました。

実験(1)では、参加者はモジューヒンの無表情な顔に対して「空腹」という意味を感じたと回答しました。

実験(2)では、参加者はモジューヒンの無表情な顔に対して「悲しみ」という意味を感じたと回答しました。

実験(3)では、参加者はモジューヒンの無表情な顔に対して「欲望」という意味を感じたと回答しました。

つまり、全く同じ表情であっても「間に挟まるモノ」が違うだけで、映像から受ける印象が変わってしまうということなのです。

さらに、実験で使用した映像には音声もなく、字幕による説明もありません。

また、本当の映画のようにストーリーもない非常に短いものなので、情報量は非常に少なく、無表情の顔に対するイメージの手掛かりとなるものはほとんど存在しないわけです。

しかし、私たちは単純な映像からも「意味」を見出し、自身の解釈や感情をそこに乗せていくことになるのです。

 クレショフ効果の実験は参加者の多くが同じ「意味」を見出すことから、映像の編集を工夫すれば、音声や字幕、事前の説明などがなくても、みんなが同じ感想を持つという大前提が分かり、それはあらゆる映画に活用されています。

ただし、心理学的な見地からクレショフ効果に関する検討はあまり実施されておらず、今後も科学的な研究という形でクレショフ効果を調べていく必要性があるのではないかとされています。