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リラックスって、何?

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  • 2018/11/02

 「全然、リラックスできない」とか「温泉につかってリラックス」のように、リラックスという言葉が日常生活で使われていることが多いかと思います。では、リラックスとは具体的にはどのような状態なのでしょうか。

 心理学では、生理心理学という分野がストレスについて扱うことが多いです。そして、ストレスと対になって語られることが多いため、リラックスについても生理心理学で研究されることが多いものとなっています。一般的に興奮したり、ストレスが発生すると自律神経のうち、交感神経が活性化することが知られています。
 交感神経が活性化すると、身体の中では、心拍数・呼吸数の上昇、消化活動の抑制、末梢部分からアドレナリン様の物質を放出とそれによる各器官を刺激などが起きます。これは、交感神経が「闘うか逃げるか」(闘争-逃走」という緊急事態に対応する際に活性化するものだからです。闘うにしても、逃げるにしても身体を激しく動かすことになるので、心拍数・呼吸数を上昇させる必要があります。そして、闘争-逃走のどちらにしても、私たちの身体のシステムとして、普段の生活で貯めておいたエネルギーを使うようになっています。
 これは、緊急事態で身体を激しく動かさなければならない状態で、同時に食事をしながらエネルギーを摂取するのは非効率だからです。そのため、緊急事態では消化活動が抑制されます。逆にリラックスして、安静な状態になると、自律神経のうち、副交感神経が活性化します。副交感神経が活性化すると、瞳孔の収縮・心臓血管系の抑制・消化吸収の活発化・汗や唾液の分泌亢進などが起きます。リラックスしていて、安静状態であるということは、緊急事態ではないので「特に何かに注意を払う必要がない」ということになります。そのため、目で何かを必死で追ったり、多くの情報を目から取り入れる必要がないので、瞳孔が収縮します。そして、身体を激しく動かす必要がないので、心臓血管系の抑制が起こります。また、副交感神経が活性化する要因として、その直前に交感神経が活性化して、身体を激しく動かしてエネルギーを消費したというケースが多いです。
 そこで、副交感神経を活性化させることで消耗したエネルギーを回復する状態を作り出します。貯めていたエネルギーを消費したので、それを回復させるためには食事をする必要があります。そこで、消化吸収の活発化やや唾液の分泌亢進が起きるのです。また、激しい運動の後で温まってしまった身体を冷ます必要もあるので、汗の分泌亢進も起きます。従って、休息や睡眠中、入浴中は副交感神経が優位に働くことになります。

 交感神経と副交感神経はバランスを取って活性・抑制を繰り返しています。基本的には交感神経が活性化していれば、副交感神経は抑制されます。逆に副交感神経が活性化すれば、交感神経は抑制されます。そのため、どちらか一方が活性化すれば、残りの一方が抑制されることになります。このメカニズムを利用して、身体をリラックス状態に導く方法として、自律訓練法というものがあります。自律訓練法の“自律”とは、自律神経のことであり、自律神経を“訓練によってコントロールする”というものになります。自律訓練法はリラクゼーション技法として非常に有名であり、科学的根拠に基づいた研究結果も豊富にあります。自律訓練法は主に以下のような手順で実施されます。
 
(1)背景公式:「気持ちが落ち着いている」
 
(2)第一公式:「両腕・両脚が重たい」
 
(3)第二公式:「両腕・両脚が温かい」
 
(4)第三公式:「心臓が静かに規則正しく打っている」
 
(5)第四公式:「とても楽に呼吸をしている」
 
(6)第五公式:「お腹が温かい」
 
(7)第六公式:「額がこころよく涼しい」
 
  このような手順で「 」の中の言葉を声に出さずに暗唱したり、専門家が指示をしながら進めていきます。これらをまとめると「気持ちが落ち着いていて、腕と脚が重く感じ、そして温かい。心臓が静かに動いていて、楽に呼吸ができる。お腹のあたりも温かいが、首から上の頭の部分は涼しくて心地いい」ということになり、簡単に言うと「露天風呂でお湯につかって、ゆったりと、くつろいでいる感じに近い」に近い状態です。前述の通り、入浴中は副交感神経が活性化するわけですが、その状態を疑似的に作り出すのが自律訓練法なのです。ただし、自律訓練法には注意事項等も多いため、実施の際は必ず専門家の指導の下で行う必要があります。

 リラックスすることは実は難しいことではなく、お風呂にゆっくりつかること、しっかりと睡眠をとることが基本なのです。これは心理学の研究によっても明らかな事実なので、皆さんも日々の生活で入浴と睡眠を大切にしてみてはいかがでしょうか。