コラム

日常用語も心理学では〇〇になる part10

2020.6.7

― 日常と科学の間にあるもの ―

心理学の辞書に掲載されている用語の中には、私たちが日常生活で当たり前のように使っている言葉を少し違った観点から捉えているものがあります。そんな「よく耳にする言葉の心理学的側面」について解説したいと思います。

①緊張

緊張という言葉は感情・気持ちを示す用語として、一般的に使われることが多いのではないでしょうか。
心理学では主に3つの側面から緊張について定義されています。
1つ目は行動に関する心理学の専門家であるハルらが提唱した行動理論に関するものです。
行動理論では、緊張は行動への動機づけられた準備状態のこととされています。
緊張により、何らかの行動のきっかけとなり、行動が終了することで緊張が解かれることになります。

2つ目は、心理学者のレヴィンが提唱した「場の理論」では、緊張とは、一種の“システム”として捉えられており、緊張状態になることで個人(個体)と周囲の環境の相互作用から、個人(個体)の行動が引き起こされると考えられています。

3つ目は、一般的な感覚に近い感情としての緊張です。
心理学者のヴントは感情を3つの次元で捉える理論を提唱しました。
1つ目の次元は「快-不快」、2つ目は「興奮-鎮静」、そして3つ目が「緊張-弛緩」となっています。

②訓練

訓練という言葉は、一般には、特定の職業や活動に必要な技術・技能の学習過程、あるいはスポーツ競技などの活動に向けて身体を慣らせたり準備したりするために規則的に行う肉体的練習のことを指します。

心理学では、

  1. 心理学における実験をする際、本実験に入る前の予備的なトライアルのことを指します。
  2. 臨床心理学に基づいた心理カウンセリングにおいて、問題となる行動を変容させるための技法のこと。たとえば、弛緩訓練・主張性訓練・ドライ・パンツ訓練などが行動に関する心理カウンセリングの“訓練技法”です。
  3. 企業等の社会的集団内で行われる組織的教育のことを“訓練”とよびます。

たとえば、管理者訓練などがあります。

③見物

何かを見物している人を見物人とよびますが、実は見物人の存在は心理的に大きな影響を及ぼすものです。
見物人としての他者が存在することによって、やる気やパフォーマンスが促進される、社会的促進という現象があります。
全く関係のない“赤の他人”であっても、1人でも他者が側にいることで、私たちは頑張ろうとしてしまうのです。
これは、私たちが常に他者からの評価を気にして過ごしているということをあらわしています。

④コンプレックス

コンプレックスという言葉は自分の弱点や、自分が気にしている部分などの意味で使われることが多いのではないでしょうか。
実はコンプレックスという言葉の語源は心理学であり、フロイトが提唱した精神分析理論に関するものなのです。
精神分析の理論において、コンプレックスとは無意識下で自我を脅かすような精神的な要素の“まとまり”のことを指します。
本来、英語の“complex”という言葉には「複合」や「複雑」「まとまり」という意味があり、精神分析においても「心のまとまり」という意味で使われています。
心理学的な意味でのコンプレックスについて、最初に提唱したのはユングやブロイラーであるとされています。
ユングによれば、コンプレックスは成長の過程での耐え難い体験から構成されており、無意識の部分に抑圧されているとしています。

また、フロイトはコンプレックスには、いくつかの種類があるとしており、エディプス・コンプレックスやエレクトラ・コンプレックスなどを提唱しています。
エディプス・コンプレックスは男児が自分の父親に対して持っている心理的な状態であり、エレクトラ・コンプレックスは女児が自分の父親に対して持っている心理的な状態を指します。
これらのコンプレックスは特定の対象への「複合的で複雑な心理状態」という意味であり「弱点」や「嫌な部分」という意味はありませんが「複雑な気持ち」という部分だけがクローズアップされた結果、一般的な意味として「コンプレックス」にはネガティブなイメージがつくようになっていると考えられます。

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