コラム

日常用語も心理学では〇〇になる part5

2020.4.4

― 日常と科学の間にあるもの ―

心理学の辞書に掲載されている用語の中には、私たちが日常生活で当たり前のように使っている言葉を少し違った観点から捉えているものがあります。
そんな「よく耳にする言葉の心理学的側面」について解説したいと思います。

①あざむき

「あざむき」とは嘘と近いもののように感じるかもしれませんが、心理学では明確に区別されます。
あざむきは、人間やその他の動物の行動の中で、意図的に誤った情報を流し、他者の行動を誤導(ミスリード)することによって利益を得ようとするという明確な目的を持ったものです。
「嘘」は言語的なニュアンスが強いものですが、あざむきは「知らないふりをする」など非言語的行動も含むものとなります。
あざむきを行うためには、他者の知識や信念を利用することが必要となるため、発達心理学の重要な理論である、心の理論を前提とするとされています。

②怒り

怒りは心理学において、基本的感情の1つであるとされています。
怒りは欲求の充足が阻止された時に、その阻害要因に対して生じるものであるとされています。
心理学者のプルチックは、怒りに対応する基本的行動次元として「破壊」があるとしており、怒りは攻撃行動を伴うことが多いとしています。
攻撃は動物のなわばり行動にも現れ、自分の所有空間に他の個体が進入しようとすると、それを阻止しようとして生まれるものです。
生理学的には、怒りの状態では交感神経系が活性化し、血圧の上昇・心拍数の増加などが生じます。

また、怒りの表情は種や文化を越えて類似しており、眉が引き寄せられて下がり、口が四角く開かれる状態になります。
怒りの表出は人間では発達とともに変化するものであり、幼少期には欲求阻害要因に直接怒りを表出し、身体的攻撃を向けたのが、発達に伴い言語による攻撃や「やつあたり」のような攻撃が出現したり、自分自身に怒りの矛先が向き、自虐的になるなど、複雑な行動をとるようになります。

うま味

日本人は昔から天然調味料として、昆布やかつおぶしを用いてきました。
この味は「うま味」と言われ、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムの味であるとされています。
うま味は四基本味(甘い・しょっぱい・苦い・酸っぱい)とは独立したものであり、第5番目の基本味であると考えられています。味に関しては、知覚心理学や生理心理学の分野で研究が進められています。

④英才教育

元来、英才教育とは、知的に優秀な児童・生徒や芸術・スポーツなど特定の領域において優秀なパフォーマンスを示す児童・生徒を早期に発見し、その能力を社会にとっても、本人の幸福にとっても望ましい方向へと向上させるために行われる教育のことを指します。
具体的には、学校において飛び級などにより、早期から高い水準の教育環境に入れることで、特別に充実した教材や訓練プログラムを用意するなどの方法があります。
日本では現行の公教育制度に飛び級等の制度を組み込むことは難しい状況ですが、試験的に検討されているケースもあります。

⑤階級

階級という言葉を心理学、特に社会心理学的な見地から説明すると、不平等と支配・従属関係の中に位置づけられた社会の諸集団という意味になります。
より広い意味では、資本主義体制下の経済的不平等に基づく集団のことを指しますが、カースト制度や封建社会の身分等も含める場合があります。
経済学者のマルクスは、資本主義体制下の主要な階級は、生産手段を所有する資本家階級と自己の労働力を資本家に売る労働者階級であるとしています。

また、ウェーバーは生産手段の所有・非所有だけでなく、富・資格・技能・知識等を階級形成の契機として考慮するとともに、社会的威信の格付や経歴・利害得失を共有する集団を重視し、階級・身分・党派等について論じています。
現在、社会階級に代わって、社会階層という用語が使われることが多くなっています。この場合、階層とは、職業・収入・教育水準などを指標として定義されるものです。


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