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これも心理学なの?(1) ―心理学の幅広さ―

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  • 2017/12/21

 心理学はとても広い領域をカバーしている学問分野です。大きく分けても、基礎・臨床・応用という3つの領域に区分することができ、その中に実に様々な分野があります。中には「これも心理学なんだ!」と驚いてしまうようなものもあります。では、心理学辞典に掲載されているもので、意外な用語について解説していきたいと思います。
 
①セサミ・ストリート(Sesame Street)
 
 セサミ・ストリートというテレビ番組をご存知の方も多いと思います。実はこの番組は教育心理学の分野で非常に重要なものであり、ちゃんと心理学の辞典に掲載されているのです。セサミ・ストリートとは、アメリカで3~5歳児の就学前教育のために作られたテレビ番組であり、チルドレンズ・テレビジョン・ワークショップ(Children's Television Workshop)が製作をしています。番組製作にあたっては、教育専門家や調査研究員も関わり、教育と娯楽の効果的な融合が図られ、子どもの注意を引きつけて離さないさまざまな工夫が凝らされています。日本では1971年からNHKで放送されており(NHKで見たことがあるという方も多いと思います)。ただし、日本では、幼児番組というより英語教育番組として扱われることが多いものです。
 
②OJT
 
 OJTとは「On the job training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の頭文字をとったものです。アルバイトや就職したばかりの新卒の時などに、この言葉を聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。OJTとは、組織が計画的に行う従業員の企業内教育訓練の方法の1種であり、従業員を仕事の現場に配置し、上司や先輩などの指導のもとで実際に一定の仕事を遂行させながら、経験を通して、職務に必要とされる知識・スキルあるいは仕事への取組み等の職務能力を高めていくことを指します。OJTは現場の思考法や企業固有の技能を伝達したり,課題解決能力を身につける上で効果的ですが、体系的知識を形成しにくい、学習ペースで組織の都合が優先されやすい等の問題点が指摘されています。このように、OJTは心理学の中でも、産業・組織心理学に関する用語であるということになります。また、OJTに対応するものとして、仕事の現場を離れて行う訓練をオフ・ザ・ジョブ・トレーニング(Off-JT)というものもあります。
 
③人見知り
 
 人見知りという言葉を聞くと「私はとても人見知りなので・・・」といように、性格(パーソナリティ)に関する表現であると感じることが多いかと思います。もちろん、そういった意味合いもありますが、実は発達心理学に関する専門用語としての意味があるのです。発達心理学では、人見知りとは、見知らぬ人に対する恐怖・不安を指す用語です。乳児が見知らぬ人を見て恐れを示すようになる以前には、見慣れた人と見知らぬ人との視覚的弁別を示さない段階、見慣れた人ほどではないが、見知らぬ人に対してもかなり容易に反応する段階、見知らぬ人を見ると冷静になり、凝視する段階があり、このような段階を経て、見知らぬ人が近づいてくると横を向いて視線をそらせたり、接触を拒んだり、不安そうな様子をみせたり、泣き叫んだりという恐れの典型的な行動を示すようになります。一般に生後8カ月頃からこのような行動が多くみられるようになるので、発達心理学者のスピッツはこれを「8カ月不安」とよび、母親から置き去りにされる不安(分離不安)の一つの形態と位置づけています。一方で、発達心理学者のボウルビィは見知らぬこと自体がもたらす不安だと定義をしています。
 また、研究の結果、人見知りの発生時期や強度にはかなりの個人差があることも分かっています。人見知りと聞くと、ネガティブなイメージもありますが、発達心理学的には、赤ちゃんが人見知りをするということは、まだ言語によるコミュニケーション能力が万全ではない状態において、信頼できる他者とそうでない他者を区別し、自分の安全を守るために必要なことであるといえるでしょう。

 いかがでしたでしょうか。身近な言葉の中にも、心理学の言葉が色々と含まれていることが分かったのではないかと思います。人間の生活と密着している学問である心理学は、気づかないうちに、皆様の生活の中に溶け込んでいるのです。