コラム

こころ検定(文部科学省後援)からみる民間資格と公的資格について 

2022.12.15

こころ検定(文部科学省後援)からみる民間資格と公的資格について 

 こころ検定は民間の検定資格であると同時に、文部科学省の後援事業にも指定されています。
では、他には心理学関連の資格には、どのようなものがあり、民間資格と公的資格には、どのような違いがあるのでしょうか。 

まず、民間資格や民間の検定についてですが、これは、こころ検定以外にも心理学関連のものが複数、存在しています。
また、新たな資格・検定が誕生することも多いので、正確な数や、どのような内容の資格・検定なのかについては、把握することが非常に難しいです。
こういった民間の心理学関連の資格・検定について興味・関心のある方は、是非、御自身で調べてみていただければと思います。

1つ注目すべき点としては、文部科学省が後援している検定は様々ありますが、現在、心理学に関する検定で文部科学省の後援を受けているのはこころ検定だけです。
そういった点では、民間の心理学に関する検定としては、こころ検定 の社会的信頼性は高いものであるといえるでしょう。 

 続いて、公的資格についてですが、心理学に関するものには、公認心理師があります。
これは、心理専門職の国家資格であり、基本的に大学・大学院で6年間勉強することで受験資格を得ることができるものです。
公認心理師は心理カウンセラーとしての業務もありますが、研究・教育・カウンセリング・アセスメント・コンサルティングという5つの仕事、医療・学校・産業・福祉・司法という5つの領域で活躍することが期待されています。
公認心理師のカリキュラムは基礎心理学・応用心理学・臨床心理学に加えて、解剖生理学や精神医学などが含まれています。
そして、これらの内容は、こころ検定においても踏襲されています。
もちろん、大学・大学院で6年間勉強する量・質には及びません。しかし、こころ検定4級では、学習心理学・認知心理学・生理心理学・知覚心理学・社会心理学・感情心理学などの基礎心理学を、3級では発達心理学・パーソナリティ心理学などの基礎心理学と教育心理学・健康心理学などの応用心理学について学ぶことができます。
そして、こころ検定2級(メンタルケア心理士)では、基礎心理学の内容に加えて、解剖生理学・精神医学・臨床心理学について学ぶことができます。
さらに、こころ検定1級では、産業・組織心理学、家族心理学、コミュニティ心理学などについて学ぶことができます。 

 このように国家資格である公認心理師のカリキュラムを可能な範囲で踏襲し、民間資格でありながら科学的・学術的な要素を多く盛り込んでいるのが、こころ検定なのです。 

こころ検定合格だけで就職や転職を目指せる?

 こころ検定は4級・3級は一般教養として心理学について初学者の方が学びやすく勉強し、正しい知識を身につけるというコンセプトの検定です。
現在、こころ検定4級と3級については、一部の高校でも授業として展開されています。
そのため、こころ検定4級やこころ検定3級に合格しただけでは、心理学の専門家としての就職や転職は難しいということがいえるでしょう。
4級と3級は、あくまで、国語・算数・理科・社会・英語に「心理」というものが基本教養として加わった場合に基礎知識を正確に理解していることを示すものであると考えていただければと思います。

ただし、民間の検定ではありますが、こころ検定は文部科学省の後援を正式に受けているので、しっかりとしたカリキュラムで科学的根拠に基づいた正確な心理学に関する知識を身につけたということを証明することができます。
従って、履歴書等に合格したことを記載することはできます。ただ、こころ検定はまだスタートして日が浅い検定ではあるので、合格した皆様が「こころ検定4級合格とは、何を学び、何を知っている状態なのか?」ということを、しっかりと自分で説明する必要があると考えられます。 

 では、こころ検定2級(メンタルケア心理士)やこころ検定1級(メンタルケア心理専門士)に合格した場合はどうでしょうか。
2級も1級も民間の検定ではありますが、文部科学省の後援を正式に受けているという点では3級・4級と同じです。
そして、2級と1級は心理学の知識を活用した他者支援をコンセプトにしたカリキュラムとなっています。
そのため、こころ検定2級(メンタルケア心理士)とこころ検定1級(メンタルケア心理専門士)は心理カウンセラー資格という側面もあります。

実際にこころ検定2級(メンタルケア心理士)やこころ検定1級(メンタルケア心理専門士)に合格された方の中で、心理カウンセラーとして活躍していらっしゃる方々が全国にいらっしゃいます。
ただし、心理カウンセラーという業界自体は非常に厳しい業界であり、たとえ、国家資格である公認心理師の資格を有していても、心理カウンセラーとしての仕事があまり無いというケースもあります。
そのため、こころ検定2級(メンタルケア心理士)やこころ検定1級(メンタルケア心理専門士)に合格した方々の多くは、心理専門職への就職や転職よりも、現在の自分の仕事に心理学の知識を活かすという形でステップアップを図っている方が多いようです。

たとえば、学校で先生をしている方は、発達心理学や神経発達症(発達障害)や知的能力障害などの知識、コミュニティ心理学における他職種連携に関する知識、人間のストレスやメンタルヘルスに関する知識を身につけることで、児童・生徒への対応や、スクールカウンセラーとの協働などをより円滑により効果的に実施できるようになります。
また、企業の人事部にお勤めの方は、産業・組織心理学やストレスチェック、事業内メンタルヘルス対策などの知識を身につけることで、職場環境の改善やより適切な採用・配属などを実施できるようになります。 

 このように、こころ検定2級(メンタルケア心理士)とこころ検定1級(メンタルケア心理専門士)では、心理カウンセラーとして活躍されている方だけでなく、様々な職種・業種の中で心理学やメンタルヘルスの知見を活かして活躍されている方々が多くいらっしゃいます。 

こころ検定のSNSでの評判や口コミでの評判は?

 さて、こころ検定に関するSNSや口コミでの評判は、どのようなものなのでしょうか。
インターネット上を含めて、世間における情報には様々なものがあります。
しかし、こころ検定に関しては、そもそも受検をしていない人の意見・感想や、少しだけ「こころ検定」という言葉を聞いただけの方々の口コミなども非常に多いです。
さらには、評判や意見を発信している方々が、受検経験が有るのか無いのか、心理学に関する知識が有るのか無いのかなどの状態を正確に知ることはできません。
従って、あまりSNSでの評判や口コミの意見などの情報を収集しても、皆さんが本当に知りたいことや正確な情報には辿り着けないのではないかと思います。
そこで、まずは、こころ検定の公式ホームページをご確認いただければと思います(https://cocoroken.jp/)。
このホームページでは、受検日程などの事務的な情報だけでなく、心理学のどのような内容を勉強するのか、自分の生活にどのように役立てられるのかなどについても記載されています。ご興味・ご関心のある方は、是非、一度、ご覧いただければと思います。 

こころ検定を目指すメリットは?

 どのような検定や受験も合格を目指すこと自体が、新たな知識や技術を獲得するという意味でメリットがあります。
では、より具体的にこころ検定を目指すことによるメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
こころ検定は各級によって公式テキストがことなり、掲載されている内容や学習範囲が異なります。
まずは、こころ検定4級の各分野のメリットについて、ご紹介したいと思います。 

学習心理学は行動に関する心理学であり、より適切な行動の増加・維持や不適切な行動の減少・消去に役立てられています。これは行動療法として、カウンセリング場面でも活かされていますが、より日常的な仕事やスポーツなどの場面にも活用されており、これは応用行動分析とよばれています。 

認知心理学が取り扱うのは記憶・思考・判断・評価・推論などの人間の認知機能です。認知心理学について勉強することで、情報処理能力が向上し、問題解決能力を向上させることができます。これは、知能が向上するというよりも、自分が陥りやすい「思考のワナ」に気づきやすくなり、間違った判断を回避することができるようになるというニュアンスです。認知心理学の知識は、私たちの生活をよりスマートにしてくれるわけです。 

生理心理学は人間の【身体】・【精神】のつながりを正確に理解し、それを数値化・可視化して、誰でも自分の現在の状態を分かり易い方法で確認できるようにすることを目指しています。生理心理学を勉強することで、ストレスと自律神経の関係性や、ストレスと病気の関係性に関して、科学的に正しく理解することができます。そして、自分自身で心身の健康状態を維持させるセルフケアのスキルを身に着ける上でも、生理心理学の知見は重要なものとなるでしょう。 

知覚心理学は目・耳・鼻・舌・皮膚という、私たちの生活にとって重要な五感に関する心理学です。知覚心理学について勉強することで、私たちは世界をどのように感じ取っているのかということをより正確に理解することができます。そして、目や耳などの健康がいかに重要なのかということも、同時に理解できるのではないかと思います。目や耳の健康を良好な状態で維持することができれば、ある程度、高齢になったとしても、より良い生活を送ることができると考えられます。 

社会心理学は他者との関係性や集団と個人の心理的過程の違いについて、様々な知見を与えてくれる分野です。社会心理学について勉強することで、円滑なコミュニケーションを図る方法を学ぶことができます。そして、常に自分と相手を尊重した態度で接することもできるようになるでしょう。これはビジネスの場面でも重要な要素であり、職種や業種を限定せず、あらゆる仕事の場面で活用できるスキルを身に着けることができるのではないかと思います。 

感情心理学は「気持ち」というものについて、科学的に正確な理解を促進する知見を有しています。そして、感情心理学を勉強することで、自分の感情や他人の感情を正確に理解することができるようになります。自分で自分の感情をコントロールするということも、セルフケアの観点からは非常に重要であり、感情心理学の知見はそこにも活かすことができます。 

続いて、こころ検定3級の各分野のメリットについて、ご紹介したいと思います。 

発達心理学は人間の精神的な発達過程について勉強します。発達心理学を勉強することで、様々な年代の「こころの動き」を科学的根拠に基づいて正確に学ぶことができます。たとえば、親は子どもの養育に関する知見を得ることができ、子育てに知識を役立てることができます。また、発達心理学は自分と異なる世代の人との円滑なコミュニケーションに役立ちます。従って、幼稚園や保育園の先生、小中高の先生、介護福祉スタッフなどのように自分とは異なる年代の人と関わることの多い業務に従事している職業の方にとって、発達心理学の知見は非常に重要な知識を与えてくれるものとなっています。パーソナリティというものを通じて、自分自身を知り、他人を知ることができるわけです。特に自分の考え方・物事の捉え方の「クセ」を知るということは、日常生活や他者とのコミュニケーションにおいて非常に重要です。そして、自分が普段、無意識にしてしまっている言動や行動の裏にある「パーソナリティ」を知ることで、日常生活をより豊かなものにすることができるわけです。 

教育心理学は授業の構成・評価やテスト・試験の問題の作成方法、何かを学ぶということのメカニズムについて勉強します。教育心理学は大学の教職課程などにおいては必須の授業となっています。従って、小中高の先生になることを目指している方にとっては、非常に重要な知識が含まれています。また、普段「テストを受ける側」であることが多い私たちですが、何かの機会に「テストを作る側」になった際、教育心理学の知見は非常に役立つものになるでしょう。 

健康心理学では、様々な基礎心理学の内容を応用的に展開させることで、心身の健康について勉強します。健康心理学について学ぶことで、心身の健康に関するセルフケアの知識を身につけ、普段の生活からリフレッシュすることができるようになります。 

 そして、こころ検定2級(メンタルケア心理士)については、4級・3級で学んだ基礎心理学・応用心理学に加えて、臨床心理学の内容を学ぶことになります。臨床心理学では、カウンセリングや、心理療法、心理検査法について学びます。臨床心理学は、基礎心理学を学び、さらに他の応用心理学を学んだ上で、それらの知識を十分に理解した状態で学ぶというステップを経るものとなっています。臨床心理学を学ぶことで、必ずしも心理カウンセラーになれるとは限りませんし、逆に言えば、臨床心理学を学んだ人は必ず心理カウンセラーにならなければならないというわけではありません。あくまで、専門的な知識として、臨床心理学は人間の心身の健康がどのような過程で悪化し、どのような過程で改善していくのかというプロセスを科学的に示してくれるものとなっています。臨床心理学を学ぶことで、人間の心理・精神というものの真髄を理解することができます。これにより、基礎心理学・応用心理学・臨床心理学という3つの心理学分野を網羅的に勉強したことになり、これをもって「心理学を学ぶ」というものがひと段落するということになります。 

さらに、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)の各分野のメリットについて、ご紹介したいと思います。 

産業・組織心理学では、職務適性や採用人事、仕事とストレスの関係などについて学ぶことができます。社会に出て仕事をするということは、様々な課題や困難に直面することになります。また、職業・業務内容が異なる場合、課題や困難も異なってきます。産業・組織心理学を勉強することで、自分と仕事の関係を再確認し、できる限り高いパフォーマンスで仕事をするためには、どうすればよいのか、できるだけ少ないストレスで仕事をするためには、どうすればよいのかなどについて知識を活かしていくことができます。 

家族心理学では、一人の人間としてではなく「家族」という集団単位での精神的な変化や発達について勉強します。家族心理学を学ぶことで、個人としての自分だけでなく、家族の中の自分、家族の中の役割というものを正確に認識することができるようになります。そして、特に家族の中の自分というものが、年齢を経たり、社会的な立場が変化する中で変わっていくということを理解し、家族内における適切な役割を身につけることができるようになるわけです。また、家族心理学は子育てや夫婦関係、高齢の両親との関係などについて、科学的な根拠に基づいて理解し、実際の家庭生活に活かすことができます。 

コミュニティ心理学は、地域コミュニティでの活動や、いわゆる他職種連携やコンサルテーションという活動に関して勉強します。地域での活動も他職種連携も共通して、様々な背景や専門知識を持つ人同士で協働するという特徴があります。そこで、専門家同士で円滑に連携する必要があります。コミュニティ心理学は、こういった人間同士の連携を円滑にし、場合によっては新たなサービスの確立・普及などの社会的にポジティブな影響を及ぼすことができる場合もあります。また、コミュニティ心理学はスクールカウンセラーの活動において必須の内容となっており、学校などの教育現場で心理カウンセラーが専門家として仕事をする際にも重要なものとなっています。 

いかがだったでしょうか。こころ検定は民間資格ではあるものの、文部科学省の後援を受けているという意味で公的な検定としての要素もあります。
そんな民間・公的の間にあるこころ検定というものを通じて、心理学に関する検定や資格について、より深く理解していただくことができれば幸いです。 


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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