コラム

認知行動療法

2022.8.25

心理カウンセリングにおいて、最も有名な手法の1つに、認知行動療法があります。 

心理カウンセリングにおいて、特に科学的根拠を重視し、精神疾患の治療・改善に有効なものとして、認知行動療法があります。 

《認知行動療法とは》

認知行動療法は、認知心理学や学習心理学(行動分析学)の理論に基づき、既存の認知療法や行動療法の技法を統合する形で誕生したものです。
クライエントの認知・感情・行動の相互作用として、精神疾患や各種症状が起きているという考えに基づき、主にクライエントの認知に働きかけることで、問題の改善・解決を進めます。
私たちは日常生活において、出来事を知覚し、知覚した出来事を認知し、認知の結果として、感情が起こり、感情によって行動が変化します。
精神面の問題に対する治療・支援において、知覚をコンとロールすることは非常に困難です。
なぜなら、知覚とは見る・聞くということと同じであり、クライエントの生活そのものを制限することになってしまうからです。
そこで、知覚の次に来る認知の部分を上手くコントロールすることで、その後の感情や行動の問題を改善していくというのが認知行動療法なのです。

認知行動療法は動物や人間に対する科学的な実験・調査の結果を応用しており、論理的かつ客観的な手法となっています。
また、最近では、ACT(アクセプタンス・コミットメントセラピー)やマインドフルネスなどの新たな潮流も起きており、治療・支援だけではなく、再発防止という観点からも発展が進んでいます。 

《認知行動療法の有効性》

認知行動療法は特にうつ病の治療・支援への有効性の高さが指摘されており、日本では、現在唯一、医療保険の対象となっています。
医療保険としては、医師が認知行動療法による治療・支援を実施した場合に算定されます。
そして、2016年度からは、認知行動療法の一部の内容については、看護師が実施した場合にも、医療保険の対象となっています。
これらの医療制度の現状を考慮し、厚生労働省からうつ病に対する認知行動療法のマニュアルが提示されています。
また、同じく厚生労働省からは、パニック症(パニック障害)、社交不安症(社会恐怖)、強迫症(強迫性障害)心的外傷後ストレス障害(PTSD)に対する認知行動療法のマニュアルも作成・提示されています。

さらに、パーソナリティ障害に対する治療・支援に対する有効性も示唆されています(ただし、パーソナリティ障害については、厚生労働省からマニュアルの提示はまだされていません)。
このように、認知行動療法は、心理カウンセリングのスタンダードとなっており、大学院の臨床心理学コースでは、ほぼ必修の講義課目となっています。
また、一般社団法人 日本認知・行動療法学会という学術団体があり、研究活動や各種シンポジウムなどを精力的に実施しています。 

認知行動療法の研究は現在も盛んに進められています。最近の研究成果として、うつ病に関する薬物療法による治療との比較検討があります。
この研究では、クライエントを薬物療法による治療のみの群と、薬物療法と認知行動療法を並行して実施する群の2つに分け、継続して1年間の治療・支援を実施する中で、その治療経過について検討しています。

その結果、認知行動療法と薬物療法を並行して受けた群で、ほぼ寛解したクライエントの割合は、認知行動療法のプログラム終了直後が43%であり、その後も徐々に高まり、1年後に73%まで上昇しています。


一方、薬物療法のみのクライアント群では、研究開始から4ヵ月後の時点で寛解が20%、その1年後は43%となっています。
この結果から、単独で薬物療法を実施するよりも、認知行動療法とセットで実施する方がより効果的であるということが判明しました。 

認知行動療法については、こころ検定1級のテキストであるカウンセリング技法で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。 

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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