コラム

様々なメンタルへルス・セルフケア(6)

2022.7.28

メンタルへルスを維持・向上させるための方法には、自分一人でも実行できるセルフケア・アプローチがいくつかあります。 

メンタルへルスを維持・向上させるための方法には、自分一人でも実行できるセルフケア・アプローチがいくつかあります。
手軽に実行できるものでも、科学的なエビデンスに基づいたものには効果があることが判明しています。
本コラムでは、前回に引き続き、そのうち、いくつかを紹介していきたいと思います。 

13. 気晴らしをする 

気分転換をすることは、ストレス解消に役立ちます。
より専門的に言えば、気分転換とは、感情を変化させるだけではなく、認知を変化させたり、認知的な負荷を減らすことを目的とした行動ということになります。
単に休息をとったり、睡眠をとったりすることもストレス軽減にはつながりますが、これらは何か活動をするという状態ではありません。

気晴らしとは、何か身体を動かしたり、頭を使うことはあるものの、仕事や勉強などで1つの方向に固まってしまっている認知や感情を「解きほぐす」ような活動のことを指します。
たとえば、何度も同じことを考えてしまうという状態があります。
これは反芻とよばれ、思考・感情の状態としては、あまりよくない状態です。
同じことをグルグル、グルグル考え続けているということは、新たな発見がなく、ネガティブな感情もそのまま残ってしまっている状態です。
もし、落ち込んでいる(抑うつ)状態だったとすると、それが反芻されれば、落ち込んだしまった原因について繰り返し同じことを考え続け、ずっと落ち込んだ気持ちのままになってしまうということです。
気晴らしとは、この反芻状態から注意をそらすような活動です。
特に指定があるわけではなく、何をするとしても問題はないのですが、現在のネガティブな状態から、思考を別のものに注意を向けさせることができればいいわけです。 

14. ポジティブ心理学 

ポジティブ心理学とは、人間性心理学という分野の系譜を受けて誕生した心理学の比較的新しい考え方です。
人間性心理学では、人間の持っている有能さや得意な能力などに焦点を当て、人間に元々備わっている自己治癒力をカウンセリングなどの実践の場で活用することを目的としています。
そして、同じく人間のポジティブな側面について心理学的に探究するのがポジティブ心理学であり、心理学者のマズローやセリグマンらが提唱したものです。 

ポジティブ心理学では「どうしたらネガティブな状態を治療・改善できるか?」よりも「どうしたら、もっとポジティブな状態になれるのか?」や「どうしたら、今のポジティブな状態が維持できるのか?」に焦点を当てます。
従って、ポジティブ心理学では主観的幸福感(ウェルビーイング)やコンピテンス(有能感)などに関する研究が多く行われています。 

ポジティブ心理学の実験として、毎日続けることで、幸福感が増加し、抑うつ感が減少するアプローチについて検討したものがあります。
実験参加者には毎日、特定の行動を行ってもらい、合わせて心理検査に回答してもらいます。
毎日実施した行動の種類と心理検査の回答結果を分析することで、どのような行動が幸福感の増加と抑うつ感の減少に影響を及ぼすのかを検討しています。

実験の結果、特に幸福感の増加と抑うつ感の減少に影響を与えたのは「3つの「良いコト」探し」と「強みの発見と新しい活用」であることが判明しました。
「3つの「良いコト」探し」は、毎日3つ、その日あった出来事の中で、よかったことを考えて、記録するというものです。

一方、「強みの発見と新しい活用」は自分の強みについて分析し、その強みを何か新しい分野に活かしてみるというものです。
このような、些細な行動でも、幸福感に影響を与え、ストレス軽減などのポジティブな効果があるのです。
また、ポジティブ心理学に関する様々な研究の結果、ポジティブな精神状態を維持することができれば、免疫力も強化でき、病気にかかりにくくなるなどの候があることも判明しています。 

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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