コラム

座禅の心理学

  • コラム
  • 2022/06/09

近年、注目を集めている座禅は心理学的な観点からも研究が実施されています。 
 
「座禅とは」
座禅の「禅」とは、元々「瞑想する」という意味をもつサンスクリット語の「dhyāna」という言葉の音訳である「禅那」に由来するものです。

禅の思想や修行法は、インドから中国を経て日本に伝わり発展したものです。
現在、日本には曹洞禅・臨済禅・黄檗禅などがあり、心理学的な研究に関しては、主に曹洞宗における座禅を対象としたものとして進められています。

特に駒澤大学は曹洞宗を主体とする大学ということもあり、仏教学科や座禅の授業などがあり、座禅に関する心理学的な研究も盛んです。
また、駒澤大学の心理学科では、禅心理学という講義も行われており、禅に関する知識、座禅の実習、座禅の心理学的研究の成果などについての授業なども実施されています。
 


座禅は仏教の修行法の1つですが、調身・調息・調心からなる実践方法が具体的に規定されており、身体を通して心を調える心身のセルフ・コントロール法として研究することができるのではないかと考えられていました。それが座禅と心理学を結びつけるきっかけとなったわけです。

座禅の種類
調身とは姿勢を調えることで、開眼のまま結跏趺坐(けっかふざ)、あるいは半跏趺坐(はんかふざ)の状態になり、背筋を伸ばして座ることを指します。

結跏趺坐とは、足の甲を交差させて、反対の足の太ももの上に乗せるというものです(半跏趺坐とは、片足を他の片足の上にのせ座ること)。

この結跏趺坐(半跏趺坐)の姿勢は、重心計や筋電図を用いて測定すると、身体の動揺が少なく安定しており、上半身の筋肉が弛緩し下半身が適度に緊張した状態になっていることが判明しています。

この姿勢で調身による姿勢が安定したら、次は調息で呼吸を調えます。
調息は呼吸を数える数息観(すそくかん)からスタートし、徐々に呼気の長い呼吸に変化させていきます。

座禅中の呼吸に関する生理的反応としては、腹式呼吸となって腹圧が上昇し、呼吸数が減少して酸素消費量が低下することが判明しています。

そして、次に調心を調える調心に入っていきます。調心では、特定の事象への注意の集中から、あらゆるものに注意を行き届かせると同時にそれらの個別の事象に囚われないという禅定の状態となることを目的としています。

この調心の段階では、脳波が徐波化して
α波の増加が認められるとともに、刺激に対するα波抑制の慣れが生じにくいということが判明しています。
脳波の中でも、α波はリラックスしている状態で発生することが判明しています。

つまり、座禅の調身・調息・調心の状態は、副交感神経を優位にし、リラックスした状態を作り出すことができるわけです。
これにより、ストレス軽減やメンタルヘルスの向上・維持が可能となるのです。
 


座禅に関する研究
座禅の研究では、まず禅に関する宗教的背景を切り離して技法の心理生理学的・生理学的な解析が進められてきたのです。
また、禅の思想や禅における意識の変容に関しては、主に心理療法の文脈で論じられています。

精神分析家のフロムやユングなども禅に関心をもつ専門家として有名です。
禅の臨床的適用に関する研究はまだ少ないものの、調身・調息・調心による心身の調整作用に加えて、臨済禅で用いられる公案という思考過程転換作用である「悟り」における心的態度の変容、修行における人間関係など、禅には心理療法に応用しうる要素が豊富に含まれています。
 

 
さらに、座禅のカウンセリング・メンタルヘルスへの応用的活用の1つとして、マインドフルネスが注目を集めています。

マインドフルネスとは、感情や思考、身体感覚、症状など「いま、ここで」体験している事柄について、感情や思考に巻き込まれることなく、それを体験していることに注意を持続させ続けることを指します。
マインドフルネスでは、瞑想や座禅、呼吸法などを組み合わせて実施することが多いです

これらの手法は、認知行動療法の第2世代における認知の修正に主軸を置かず、受け入れたり、注意を集中したりすることに比重を置いています。 
このように、禅・座禅は基礎的研究から、カウンセリング・メンタルヘルスに至るまで、幅広く展開されているのです。