コラム

営業の心理学

2022.4.7

営業活動は、お客様の心をつかむことが非常に需要になります。
しかし、お客様も千差万別で、1つの方法だけで、いつも成功するとは限りません。
そこで、今回は心理学的な観点からお客様への上手な営業方法について解説していきたいと思います。

どんな人にとっても、形のある商品も形のないサービスも、全ての人は基本的に「知らない」というところからはじまります。
営業において、まずは「知ってもらう」というところからスタートしなければなりません。

しかし、何千、何万とある商品・サービスの中から、自社のものを選択してもらうには、お客様・ユーザーの心理を動かす必要があります。
そのため、営業のスタートには宣伝と広告という要素が重要になります。
心理学では、宣伝・広告の「王道」となる流れがあり、以下のように定義されています。

  1. 注目(attention):まず、お客様・ユーザーを商品・サービスに注目させる。
  2. 興味(interest):お客様・ユーザーに商品・サービスの内容に興味を持ってもらう。
  3. 欲求(desire):お客様・ユーザー様に商品・サービスを“欲しい”と思ってもらう。
  4. 記憶(memory):お客様・ユーザーに商品・サービスのことを記憶してもらう。
  5. 購買(action):お客様・ユーザーに商品・サービスを「手に取ってもらう」(購買行動)

これら5つのステップは、それぞれの頭文字をとって「アイドマ(AIDMA)」の法則とよばれています。
これらは単にチラシやCMなどの広告でも活用されていますが、いわゆる“営業パーソン”も、この5つのステップを意識しながら、お客様・ユーザーとコミュニケーションをとるのが基本と言えるでしょう。

営業において、「アイドマ(AIDMA)の法則」に沿って対応する中での目標は、お客様・ユーザーの態度を変えることです。
注目していない状態から注目する状態へ、興味が無い状態から興味を持つ状態へ、欲しいと思っていない状態から欲しいを思う状態へ、これらは全て、お客様・ユーザーの態度を初期状態から変化させることです。

社会心理学で態度変容とよばれるこの現象は説得によって引き起こされるものであるとしており、様々な研究が実施されています。
特に効果的なアプローチとされているのが、精緻化見込みモデルとよばれるものです。

《精緻化見込みモデルのアプローチ例》

たとえば、最新のノートパソコンの販売営業をしていくとしましょう。
この際、説得のルートは中心ルート周辺ルートの2つに分かれます。
中心ルートとは、商品・サービスなどの“コア”となる特徴です。
最新のノートパソコンであれば、PCのスペックなどの“パソコンそのもの”の重要な要素です。

一方で、周辺ルートとは“たくさんの人が使っていて、人気がある”や“有名な芸能人も愛用している”などの、直接、商品・サービスそのものとは関係の無い要素です。
この中心ルートと周辺ルートを上手に使い分ける必要ことで、顧客ごとのニーズに合わせた説得が可能になります。

たとえば、システム・エンジニアのようにPCやITに関する専門知識を持つ人にノートパソコンを購入してもらいたいなら、周辺ルートである“沢山の人が使っている”とか“有名人も使っている”などの説得には意味がありません。

逆に、高齢者の方などのパソコンやITに詳しくない人に対して、いくら高スペックであるという面を強調しても、態度変容は起こりません。
商品・サービスに対する事前知識のある人には中心ルートで、事前知識の無い人には周辺ルートで説得することが効果的かつ、説得に要する時間を省くこともできます。

このような営業に関する心理学の中でも、精緻化見込みモデルのような態度変容や説得に関するコミュニケーションについては、こころ検定4級の第5章で概観していますので、興味・関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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