心理学の辞書に掲載されている用語の中には、私たちが日常生活で当たり前のように使っている言葉を少し違った観点から捉えているものがあります。
そんな「よく耳にする言葉の心理学的側面」について解説したいと思います。
「デ・ジャヴ」という言葉を聞いたことがあるという方は多いかと思います。
日本語では既視感と訳されるものですが、本来はフランス語であり、なかなかストレートに翻訳するのが難しい言葉でもあります。
デ・ジャヴとは、新しい状況を過去に経験したことがあると感じる体験のことです。
多くの人が経験することのあるものであるとされていますが、普通はそれが過去のいつ経験したことなのかを具体的に答えることはできません。
実はデ・ジャヴには精神病性のものと非精神病性のものがあり、非精神病性の場合には、既視体験は数秒間で消失し、また過去のどの時点のどのような場所であるかは明確に認識できません。
しかし、精神病性の場合には、既視の感覚は圧倒的で長時間持続し、時点や場所が確信的に認識されます。
デ・ジャヴの生起メカニズムは明らかになっていませんが、過去の経験を正確に想起できない一種の記憶障害なのではないかという仮説が立てられています。
また、記憶は変化するものであるため、過去の経験が時間の経過とともに変化し、目の前にある光景と一致させることができず、そのような不一致がデ・ジャヴとして現れるという考え方もあります。
コンサルティングやコンサルタント、コンサルテーションという言葉は日常でもよく耳にするかと思いますが、心理学では日常用語とは少し異なるニュアンスで使われています。
心理学の分野におけるコンサルテーションとは、精神科医や心理カウンセラーなどが、他の専門家の依頼に応じて、クライエントの精神状態や行動、それらに対する処置や治療方針についての相談を受け、適切なアドバイスを行うことを指します。
催眠術という言葉を聞いたことがあるという方は多いかと思います。
では、催眠とは心理学的にどのような状態を意味しているのでしょうか。
催眠は18世紀後半にオーストリアのウィーン出身の医師であるメスメルが、フランスのパリで心理カウンセリング(心理療法)に「動物磁気」という名称の技法(アプローチ)を用いてクライエントの持つ悩みの改善・解決をしたことに端を発すると言われています。
つまり、最初は催眠という用語ではなく「動物磁気」よばれていたわけです。
催眠には大きく分けて2つの要素があります。
1つは催眠状態とよばれる意識状態であり、もう1つは,催眠状態において生じる催眠暗示現象です。
催眠の意識状態としては、現実感覚が薄れ、理性的思考が緩み、想像の世界の中に入り、想像自体が現実味を帯びるような意識状態であるとされています。この意識状態は、催眠性トランスともよばれます。
この意識状態は変性意識状態(ASC)の1つであるとされ、催眠意識状態に関する研究はASCとの関連で行われることが多いです。
そして、催眠暗示現象の方は、代表的なものとして、運動性の暗示現象として四肢などが動くあるいは動かない現象、固くなる現象などです。
知覚性の暗示現象としては、たとえば、痛みや温感・味覚・聴覚・触覚などにおける知覚の変容があります。
特に身体知覚における暗示現象は生じやすいとされています。
パーソナリティ(性格・固有性の高いもの)に関する暗示現象として、年齢退行・健忘・自動書記・人格交替・後催眠暗示などの様々な暗示現象があります。
催眠術などをテレビ番組などで行っているのを見ると「実はウソなのでは?」と感じることもあるでしょう。実際に暗示現象と同じ行動を演技的に行うことは可能です。
しかし、暗示現象は演技と大きく異なり、その人自身には自分が行っている感覚がありませんので、厳密に演技と催眠状態は区別することができるわけです。
催眠状態は催眠に誘導するプロセスを経過してはじめて生じるという考え方もありますが、最近は催眠状態は日常生活の中でもよく生じていると考えられており、催眠状態に入るプロセス(いわゆる催眠術のようなもの)よりも、その意識状態の特徴に関心が向けられるようになってきています。
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