人権宣言記念日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。8月26日は「人権宣言記念日」に制定されています。これは、1789年8月26日にフランスの憲法制定国民議会が「人間と市民の権利の宣言」(フランス人権宣言)を採択したことが由来となっています。「人間と市民の権利の宣言」は、人間の自由と平等・人民主権・言論の自由・三権分立・所有権の神聖など17条からなるフランス革命の基本原則を記したものです。
では、人権と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。
人権は前述の通り、人間の自由と平等・人民主権・言論の自由・三権分立・所有権の神聖などで構成されており、日本だけでなく、世界中で「守るべきもの」として尊重されるべきものとなっています。しかし、不平等や言論の問題、差別や偏見などにより、基本的な人権が尊重されないことも多いです。心理学では、これらの「人権に関する問題」について研究対象としています。
たとえば、偏見という概念は特定の集団に対する否定的な態度の総称です。態度の三要素説から、認知・感情・行動が態度を構成するとされており、偏見は認知的要素・感情的要素を合わせたものであるとされています。偏見は形成・維持・解消という段階が存在しています。偏見の形成は重要な他者からの社会的影響によって形成されることが多いです。また、限られた資源をめぐる競争から集団間の葛藤を生じることで、敵対する外集団への攻撃を正当化するように偏見が発生することもあります。さらには、内集団において蓄積した欲求不満を解消するため、成員の誰かを悪玉化(スケープゴート化)して、偏見の対象となることがあります。
続いて、偏見の維持のプロセスですが、これは偏見を個人が無批判に受容・同調することで維持されていき、偏見をもつ人々による自己充足的予言の結果として強化されてしまいます。特定の偏見をある集団に対してもっている人は、その集団の成員に対しても否定的・非好意的な評価を一般化する傾向があります。また、特定集団に対する偏見をもつ人は集団成員が行う行動のうち偏見に合致する情報を記憶してしまいます。さらに、成員の永続的な固有属性によるものとして、成員自身に原因を内部帰属する傾向があります。逆に偏見に合致しない行動は無視したり、成員以外の状況的要因に原因を外部帰属し一時的なものとみる傾向もあります。
最後に偏見の解消ですが、必ずしも解消されずに存在し続けてしまうのが偏見の大きな問題であるということが前提となります。その上で、偏見が解消されるプロセスとして、注意深く中立的に相手を判断するという態度は非常に重要となります。特に偏見が強すぎる場合には、偏見を制御する努力が不可欠になります。また、共通の危機の回避を目標に協力することは集団間の葛藤解決を促進でき、その過程で偏見が解消されることもあります。さらには、偏見をもつ人の社会的地位や満足度が上昇し欲求不満が解消される、集団成員と相互作用を深めることでも解消される可能性があります。ただし、接触自体が嫌悪を喚起する状態や集団間の地位が違いすぎる場合には逆効果となってしまうケースもあります。
偏見と近い概念として、差別というものがあります。これは、偏見における否定的な態度の中の行動的要素に意味を限定したものです。さらに、ステレオタイプという概念もありますが、これは偏見の認知的要素が集団成員全般に一般化されたものであるとされています。つまり、偏見という大きなカテゴリーの中に差別とステレオタイプが含まれており、差別は偏見的な行動、ステレオタイプは認知に関する要素であるということになります。
このように、人権を侵害する要素である偏見について、心理学では主に社会心理学的・認知心理学の観点から研究が実施されています。
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