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心理専門職の仕事(1)研究

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  • 2019/08/27

心理専門職には、いくつか代表的な仕事があり、そのうちの1つが研究職です。
 
心理学に関する知識や技術を活かして社会で活動する人のことを、心理専門職とよびます。

基本的には大学の心理学科を卒業し、大学院に入学して修士課程・博士課程を修了した方々が心理専門職として活躍していることが多いです(※学部卒業で活躍している方もいます)。

大学の学部では基本的な知識である基礎心理学や心理統計学に加えて、心理学研究法、心理学実験法、心理検査学などについて学び、3年・4年時にゼミに入ります。

ゼミでは、指導教官となる教授から研究指導を受けながら、卒業論文を書くための実験や調査を実施します。

その後、大学院に入学した場合は、より専門的な内容を学び、さらに高度な内容の修士論文を書くために実験や調査を行います。このような過程を経て、心理学の専門家としての育成が進んでいきます。

心理専門職の重要な仕事の1つに研究があります。

心理学における研究は実験や調査を通じて、人間の心理的過程について明らかにするものです。

研究は、心理専門職にとって最も重要な活動の1つといても過言ではありません。

なぜなら、全ては研究からスタートするからです。

心理学について誰かに教えるという場合、それは研究の結果、判明した科学的事実について伝えるということを指します。

また、カウンセリングやアセスメントも、研究成果に基づいて開発された療法や検査を実施することを指します。

同様にコンサルテーションも研究成果やこれまでの先行研究のデータに基づいて実施されます。

このように、心理学に関するあらゆる事象は研究にはじまり、さらにレベルを高めるために継続した研究活動が必要となっているのです。

研究には様々なアプローチの仕方がありますが、そのうちの1つに事例研究法があります。事例研究法は、1事例もしくはごく少数の事例に対して、綿密な調査・テスト・実験・面接・観察などを通じて、その心理的状態や心理的過程を明らかにする手法です。

事例研究法には、いくつかの下位分類があります。

1つ目は、臨床心理学における事例研究などのように、研究の対象となる事例(個人)の個別性・特殊性に焦点を当てるというものです。

2つ目は、医学領域における症例報告などのように、これまでに確認・報告されていなかった新奇の事象について、観察・分析するというものです。

3つ目は、特定の集団に対して、密着した緻密な分析を実施するものです。たとえば,0歳~1歳までの乳幼児を対象とした研究などが該当します。

事例研究法は、一般的に科学性(客観性・再現可能性・普遍性など)が疑問視されるケースが少なくないという問題点もあります。

しかし、研究の対象となる人やその生活を自然な状態で丸ごと全体的に捉えることができるというメリットもあります。

心理カウンセリングにおいても、事例研究を実施することが多々あります。

たとえば、うつ病のクライエントがカウンセリングを受けているとします。

そこで、このクライエントに認知行動療法を実施するとします。

この認知行動療法によるカウンセリングの過程を時系列的に追っていき、どのように治療・支援が進んでいくのかを記述し、場合によってはデータを分析するというのが、いわゆる臨床心理学分野におけるケーススタディ(事例研究)なのです。

心理カウンセリングにおける事例研究には、いくつか実施に当たっての注意事項があります。

実在のクライエントに関する研究であるため、個人情報を保護する必要があります。

ただし、クライエントの許可を受けて研究の実施・発表をするので、カウンセリング中にどんな話をしたのか、対人関係の状態などは基本的に全て明らかにしていきます。

心理専門職の仕事については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストであるカウンセリング技法の第1章で概観しています。ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。