コラム

少し変わった視点から心理学を考える part4

2020.4.1

心理学の研究は一風変わった側面から物事を捉え、面白い結論を導き出しているものがあります。
 
心理学に関する研究は、私たち人間の“滑稽さ”や“上手く行かない歯がゆさ”についても、様々な角度から教えてくれます。

忙しい時ほど、トイレに行きたくなるのはなぜか?

オランダのミリアム・トゥック、デブラ・トランペ、ベルギーのリュック・ワルロップ、マシュー・ルイス、ピーター・スナイダー、アメリカのロバート・フェルドマン、ロバート・ペチャック、デイヴィッド・ダービー、オーストラリアのポール・マルフは「忙しい最中ほど無性にトイレに行きたくなる」という現象について、また、トイレに行きたくてたまらない時に下した決断が場合によっては、良かったり悪かったりするのはどうしてなのかについて、その原因を追究しました。
 
その結果、排泄への衝動が強い場合、注意力や作業記憶などに大きな悪影響を及ぼすことが明らかになりました。
 
また、膀胱のコントロールが上手な人は下手な人と比べて、お金を使うなどの誘惑に対する抵抗力が高いことが判明しました。

会社で昇進させるべき人は誰なのか?

イタリア・カターニア大学のアレッサンドロ・プルチーノ、アンドレア・ラピサルダ、チェーザレ・ガロファロたちは、産業・組織心理学におけるピーターの法則について研究しました。
 
ピーターの法則とは、企業等における組織構成員(従業員)の仕事や昇進に関する法則です。
 
能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世することができるが、有能な平(ひら)構成員は、無能な中間管理職になってしまう。
 
そして、時が経つにつれて、人間はみな出世していくが、無能な平構成員は、そのまま平構成員の地位に落ち着き、有能な平構成員は無能な中間管理職の地位に落ち着いてしまい、結果として、各階層は無能な人間で埋め尽くされてしまうというものです。
 
ピーターの法則は「あらゆる有効な手段は、より困難な問題に次々と応用され、やがては失敗する」ということを示す好例といえるでしょう。
 
現在の仕事の業績に基づいて、ある人材が今後も昇進できるかどうか判断することができますが、階層組織の構成員はやがて有効に仕事ができる最高の地位まで達し、その後さらに昇進すると無能になってしまうということです。
 
結局、昇進し続ける過程で、最高位の地位になってしまうと、最高の地位はその人材にとって「不適当な地位」であり、その地位にある限り、高いパフォーマンスは発揮できないということです。
 
ピーターの法則は非常に有名なものではありますが、とはいっても、実際の企業ではこの法則に基づいて昇進を決めるということは、ほとんどないと言っていいでしょう。
 
昇進する人はどんどん昇進しますが、部長職にある人物が社長職についても、その人に「社長職としての才能」があるとは限らないわけです。
 
しかし、誰が社長職に就くのかという決定は、会社全体の浮き沈みにも関連する重要な要素であるわけですが、そんな重要な決定が上手く行かないことが多いわけです。
 
そこで、ピーターの法則はどこまで正しいのか、また、どのような対応策があるのかをアレッサンドロ・プルチーノらは検討しました。
 
その結果「昇進させる人物をランダムに選んだ方が、組織はより効率的になる」ということを数学的に証明しました。
 
会社内の人事には様々な評価・考課を加味して慎重に決定されることがおおいです。
 
しかし、数学的な見地からランダム(適当)に決めてしまっても、あまり問題は無いということが判明してしまったのです。

暴言を吐くことの効果

イギリス・キール大学のチャード・スティーブンス、ジョン・アトキンス、アンドリュー・キングストンは暴言や罵りの言葉を吐くと痛みが取り除かれる、という広く信じられている迷信について科学的に検討しました。
 
チャード・スティーブンスらは、実験参加者に氷水に一定の時間、手を浸してもらうという実験を実施しました。
 
その結果、氷水に手を漬けている間、罵倒し続ける条件の参加者は、何も言わない参加者よりも、約50%長く痛みに耐えることができました。
 
実験中、参加者は心拍数も上がり疼痛知覚が低下していることも判明しており、これは脅威に対する感受性が低下することで、闘争逃走反応が働いたのではないかと推測されています。
 
ただし、さらなる追加実験の結果、穏やかな人の方が大きく痛みが軽減するとも明らかになり、普段から罵り倒す癖がある人にはほとんど効果が得られないということも判明しました。

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