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日常用語も心理学では〇〇になる part6

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  • 2018/04/04

― 日常と科学の間にあるもの ―
 
 心理学の辞書に掲載されている用語の中には、私たちが日常生活で当たり前のように使っている言葉を少し違った観点から捉えているものがあります。そんな「よく耳にする言葉の心理学的側面」について解説したいと思います。
 
①後知恵
 
 後知恵とは、ある事象が生じた後になってから、生じる以前にそれが起こる可能性(確率)をどう見積もっていたかを考えることです。ある事柄が起きてから「そもそも、私はそうなると思っていたんだ」と考えることは、専門的な言葉で「事後推測的確率」とよびます。この事後推測的確率は、本来、事前に予想していた確率よりも高くなる傾向があり、これは後知恵のバイアスとよばれています。結果を知った上で判断が変化するという人間の傾向は非常に気づきにくいものであるため、予測や判断に対する過信の原因となりやすいことが判明しています。
 
②色の好み
 
 色の好みについては、心理学的な研究がたくさん実施されています。その結果、国や民族の違いはあるものの、だいたいの人が青を好むということが分かっています。しかし、色の好みを人に尋ねることは非常に難しいものです。人間は日常生活において「色」を単体で捉えることが少なく、「赤い車」や「青いシャツ」などのように、何らかの物とセットで色というものを捉えています。そのため、色の好みは、物の好みと切り離せないため「赤」という「色」が好きなのか、「車」が好きで、たまたま「赤い車」があるから「車好き ⇒ 赤が好き」となってしまっているのかが厳密には分からないという問題があります。
 
③親子関係
 
 人間は他の動物に比べて、成人に達するまで長期間を要するところから、子どもを養育するために家族というものがあります。家族は幼い子どもを単に養育するだけではなく、その所属する社会の持つ文化や規範など、社会の構成員として必要とされる知識や技術の基礎をしつけや教育という具体的な働きかけを通して、子どもの中に形成していく役割を担っています。親子関係において重要なのは、子ども自身がもつ能力として、子どもの方から積極的に親子関係を形成していく愛着行動であるとされています。当初、愛着は生涯にわたって変化していくものと考えられていましたが、特に乳児期の親との愛着のあり方が、その後の青年期にかけての発達に大きな影響を及ぼすことが指摘されています。
 また、近年では、発達初期の親子関係に認められる対話(言語)を媒介とする親子間での社会文化的な意味の形成や、共有活動システムに注目が集まっています。さらに、親子関係からスタートし、家族・近隣住民との関係・学校集団・職場集団に至るまでの対人関係の中で認められる対話様式と対話参加者の認識形成の関係を明らかにすることにより、生涯にわたる文化に依存した相対的な発達の様相を浮き彫りにするための研究が進められています。
 
④過保護
 
 過保護と聞くと、何か特別な事柄なようなニュアンスを感じるかもしれません。しかし、心理学において過保護とは、ごく一般的に子どもに対して保護的でありすぎる親の養育態度のことを指します。心理学者のサイモンズは支配と服従を共に持った態度、心理学者の守屋光雄は干渉と不安とが含まれるもの、心理学者の玉井収介は親が子どもに果たすべき文化伝達機能が不十分で、保護機能の度が過ぎた場合をそれぞれ「過保護」として定義しています。過保護の発生原因として、家族構成や子どもの神経発達症(発達障害)、家庭内の緊張や不和、親自身の幼少時の経験などが挙げられ、その反応として、自主性に乏しく依頼心が強く、引っ込み思案などの傾向を示しがちになるとされています。
 
⑤興味
 
 興味には心理学でも様々な定義がされています。注意を向けた対象に対する快感や緊張を伴った感情、ある対象に対する反応を引き起こす準備状態としての態度、対象に対する接近行動を引き起こす動機づけ要因などです。興味は人間にとって最も重要な心的要素の1つであると考えられています。特に新奇なものに対する興味は、自発的な探索行動をはじめとする情報収集活動を引き起こし、学習や発達を促進するための契機となる非常に重要なものなのです。
 また、発達心理学者のピアジェの発達理論を支えた乳児の好奇行動の観察例や、発達心理学者のファンツによる乳児の選好注視の研究は、人間がその発達の初期から興味を有していることを明らかにしています。