コラム

日本の有名な心理学者たち Part8

2020.4.23

心理学者やメンタルへルスの専門家には、日本人にも多くの有名な先生方がいらっしゃいます。そんな日本を代表する先生方の一部を御紹介させていただきたいと思います。

河合 隼雄先生

河合先生は1928年兵庫県生まれの心理学者です。1952年に京都大学・理学部・数学科を卒業後、京都大学・大学院に進学した河合先生は、心理学に関する研究を続けながら、高校で数学の教師を3年間勤められています。

河合先生はまず、ロールシャッハ・テストに興味・関心を抱き、約1000人にロールシャッハ・テストを実施して、そのデータを分析・検討しています。1959年に、フルブライト奨学生として、カリフォルニア大学・ロサンゼルス校 (UCLA)に留学した河合先生は、そこでクロッパーやシュピーゲルマンらから研究指導を受け、後に現地で助手も務められています。

指導教官であるクロッパーから、精神分析や投影法について学ぶのであれば、アメリカよりも本場のスイスで学んだ方が良いというアドバイスを受け、河合先生はスイスに留学します。元々、クロッパー自身がユング研究所に在籍していたこともあり、河合先生のためにクロッパーが推薦書を書き、河合先生はユング研究所から奨学金を支給されることになりました。

1962年から1965年まで、ユング研究所に留学した河合先生は日本人として初めてユング派分析家の資格を取得しています。河合先生は、日本における分析心理学の普及・実践に貢献した第一人者でもあります。

また、箱庭療法を日本へ初めて紹介したのも河合先生であり、日本箱庭療法学会の設立にも携わられています。さらには、1985年に国際箱庭療法学会が設立され、河合先生はその創設メンバーにも名を連ねています。

日本に帰国後、1972年から1992年まで京都大学・教育学部で教授を務め、退官後はアメリカのプリンストン大学で客員研究員をされています。また、国際日本文化研究センター所長なども歴任されています。

また、臨床心理学・分析心理学の立場から1988年に日本臨床心理士資格認定協会を設立し、臨床心理士の資格整備にも貢献されているのも有名です。現在、国家資格である公認心理師がありますが、それ以前に大学・大学院で6年間、しっかりと基礎を勉強した上で、心理臨床に関する技術も合わせて学び、論文執筆という科学者としての視点の育成までセットでカリキュラムを構成しているのは臨床心理士資格だけでした。

そういった意味でも、日本の心理カウンセラーの基礎を作ったのは、河合先生であると言っても過言ではないのです。河合先生は臨床心理士制度の確立だけではなく、そこから派生する形でスクールカウンセラー制度の確立にも尽力され、日本臨床心理士会会長も務められています。

河合先生の功績は学術分野のみではなく、政治の世界でも活躍されています。河合先生は2002年に文化庁長官に就任されていますが、河合先生のような民間人(官僚ではない人)が長官に起用されるのは、歴史的にも3人しかおらず、非常に珍しいことでもありました。

文化庁長官の任期は2年間と定められていますが、河合先生はその手腕を買われ、2度にわたって長官留任を要請され、2006年まで、合計3期・4年の間、長官を務められました。

長官在任中は、文部科学省が全国の小・中学校に配布した道徳の副教材『こころのノート』の編集に携わられています。

このように、河合先生はしっかりとした研究実績に裏打ちされた豊富な知識と技術を生かし、心理学の専門家、心理カウンセラーと活躍されるだけでなく、当時、まだ法的な制度がせいびされていなかった心理臨床の世界を、政治的な観点からも整備することに貢献されています。

河合先生が専門とされたユング心理学の基礎的な部分である精神分析については、こころ検定2級(メンタルケア心理士)のテキストであるカウンセリング基本技法で概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

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